回顧と展望

年が明けてめでたいことなど一つもないわッ!(挨拶)

さてこういう機会に昨年の回顧と今年の展望をしてみんとてするなり。まず昨年はなんといっても自作元年であり、自分でアンプを作るという行為にすっかりはまってしまった。考えてみれば作ったのは所詮三極管シングルアンプの、それも単純な回路ばかりなのだが、それでも一から設計して自分の意図する音に近づけるように考えるということは楽しいものである。経験値が増えるに従って作るアンプの合理性も増してくるので、たとえば參號機 2A3 シングルなどは聴感上ノイズがほぼゼロである。もちろん測定すれば多少は検出されるのだろうが、Lowther のユニットに耳を付けても何も聞こえないというのは球アンプとしては結構なものだと自画自賛している。

これに伴い、色々とため込んでいた機材や電線類をあらかた処分して随分身軽になった。特に電線については、ごく基本的なラインさえ守れればなんでもいいという気分になって、電源とかスピーカーケーブルなんてものはメートル3,000円くらいの切り売りで十分だ。アンプの内部配線材を変えてみても音の違いなんて分からないしなあ。

それと昨年も押し迫ってから導入した Scott Nixon の DAC。これが思いの外よくて、音は気に入ってるものの利便性で問題を抱えている dAck! をリプレースできそうだ。もっともこの DAC も、6DJ8 ってのは案外熱くなる球なので、ずっとつけっぱなしにしておくのは気が引けるのだが。

もう一つの大事件は Lowther の導入で、これがアンプの自作に拍車をかけたといえよう。箱は専門家にお願いしていいものができたのだが、なにしろ気難しいユニットで、あちらを立てればこちらが立たず、のループに陥って、昨年の後半は Lowther との格闘に費やされた。しかしツボにはまった時の表現力が圧倒的なので、何とかしてやろうという気にはさせてくれるし、実際導入当初と比べれば飛躍的にいい感じで鳴らせるようにはなった。まだまだ足りないところはあるので格闘は続くのだが。

しかしLowther なんてものは基本設計は50年くらい前のもので、オレが使ってるのも30年以上前のユニットである。それがこれだけ上から下まで伸びてなおかつ大変な表現力を具えているのだから、進歩というものがいかに相対的な概念に過ぎないかが実感される。様々な側面でいい選択であったと思っている。

一方展望であるが、こちらはさして言うべきことはない。基本的には Lowther からいかにオレなりにいい音を引き出すかというテーマが継続されるだけであって、具体的な事案としては 421A PP アンプがあるくらいだ。これだってようやく回路のアウトラインが定まってきたくらいで、421A の動作点すら、つまりA級なのか AB 級なのかさえ決定していない。自作ってのはこういう妄想段階が一番楽しいんだけどね。あとはプリアンプを製作当時よりは増大した経験値をもってリファインしたいとは思っているが、こちらはさらに具体性を伴わない。フォノアンプを作ってみたいとも思うが、ここらへんは一から勉強である。勉強のテーマとしては骨があっていいのではないか。

とにかく言えることは、オーディオに久方ぶりにはまってから数年、あっちに行ったりこっちに行ったりしていたものがようやく確固たる方向性を獲得したということである。もともと予算の規模が小さいのだから、回路を考える分にはタダで、かつ球や部品を少しずつ貯めていくことができるために製作時にさほど大きな資金を必要としない自作という方向はオレみたいな貧乏人にはうってつけである。Lowther という高能率フルレンジの伴侶を得たことでアンプも大規模なものを必要としないし。ジャンボも外れたから、FMアコースティックのアンプでジャーマンフィジックスのスピーカーを鳴らすような生活は別の世界のものであり続けるわけである。なんかで一発当てて大金を手に入れたりしたら言うことが180度変わるだろうことはオレの性格を考えるとあまりにも明らかなんだけどね。