6CW5PP

今年初の記事ということで明けましておめでとうございます(違

さて Harbeth HL-P3 は快調なのだが、よりこのスピーカーに特化したアンプを作ろう!というところまでが前回のお話であった。そういうわけで当初の予定通り 6CW5 三結の PP アンプを作ってみた。

そもそも手持ちの OPT が TANGO の U25-5 という一次側が 5k のもので、これに適合した球というのが案外少ない。デスクトップアンプということで大げさなものにはしたくないからできれば MT 管で済ませたいということもあり、そうなると選択肢は限られてくるのである。

6CW5/ EL86 は SG 耐圧が低いのだが、三結の場合はスクリーンに流れる電流がごく少ないのでオーバーしても平気であろう。Ep-Ip 曲線を眺めておおよそ Ep=250V、Ip= 40mA くらいのあたりに動作点を置いてみる。そのうえでそれなりの負帰還をかける余裕を前提に前段を考えると、せっかく出力管の内部抵抗がそこそこに低いのだから、初段にゲインを振った PK 分割よりもムラード型のほうが適切に思える。ということで回路がこうなった。

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ちょっと凝ってみたのは、位相反転段の共通カソードを定電流回路で縛ったところで、こうすると交流的にはカソードが浮くことになるから正確な差動動作が期待できて上下のバランスを考えなくてよくなる。定電流源としては初段の 6BL8 の三極部のカソードに 4mA の CRD をぶら下げて使う。この CRD は以前別用途で選別した 2SK30A を流用している。また出力段は自己バイアスだが、バイアスが微調整できるようにして電流が揃うように考えた。

そういう回路で作ってみたら、出力管の電流が想定より若干少ない以外はほぼ設計通りの数字が得られた。完成形はこういう感じ。

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エリーチカのシルエットのステッカーがアクセント。それ以外はごく平凡なデザインである。

ざっと測定してみると、出力は THD=5% で 7W と、予定より少し小さい。位相反転段が出力管をドライブしきれてないかなあ。ノイズは測定不能、ゲインはおおよそ 8dB の NFB をかけた上で 27dB くらいであり、これも想定通り。DF は約 3 で思ったより低いが実用に問題はないレベルだ。周波数特性を測ると、いつものことながら高域に大きなピークがあるので(今回は全体に内部抵抗の低めの回路なせいもあって膨らみが大きい)初段と負帰還抵抗にそれぞれ補正を加えたところ、10Hz ~ 70kHz くらいまでがほぼフラットになった。

一発で動作したので鳴らしてみると、低域寄りのピラミッドバランスである。厚みと迫力のある音だ。もう少しスッキリした嫌味のない感じになるかと予想していたのでこれは予想外。しかしなかなかいい音なので満足である。