300Bシングル

もう1年以上、シャーシの加工とフィラメント配線を済ませ、部品をあらかた揃えた段階で放置していた NL50 / 300B シングルだが、色々考えて基本的には 300B シングルとして作ることにした。というのも、入手した OPT が 3k のもので、300B より内部抵抗の高い NL50 にはミスマッチな気がしたから。NL50 についてはまた改めて考えよう。

回路自体は単なる三段増幅のシングルなのだが、色々ギミックを考えたせいでかなりややこしくなった。フィラメント電圧の切り替えは NL50 も使えるようにという名残で、固定バイアスの調整幅が広いのも同様。回路の肝はドライバを 71A のプレートチョーク負荷にしたこと。直熱管ドライブの直熱管アンプを一度やってみたかったのだ。おかげでドライバのフィラメントも別に用意しなきゃいけなくてフィラメントトランスを内蔵するはめになった。というわけでこういう回路。

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初段は 12AX7 のパラレルでドライバの 71A とは直結。71A のフィラメントは安定化している。ここがプレートフォロワの直結なので整流管はゆっくり電圧が上がる傍熱管しか使えない。71A のプレートチョークは台湾の Vintage Audio Lab というショップのもの。71A をだいたい Ep=170V、Ip=17mA くらいを目安に使う。ここの交流負荷がほぼ無限なので、事実上出力段のグリッド抵抗が負荷になるが、ここはおかげでうんと小さくできるので 15k とする。カップリングコンデンサは低域のスタガ比を確保するためにかなり大きなものになる。ここでは 4.7uF を採用。出力段の 300B は図の通り Ep=420V、Ip=75mA あたりを目安にする。300B としては酷使の部類だが、どうせペア1万円ちょっとで買える桂光の 300B なので勿体ながらずにゴリゴリ使うことにする。

OPT は香港の DIY Hifi Supply というキットメーカーのもので、以前セールで投げ売りされていたのを買っておいた。本体とケースがバラで届いたので自分で樹脂を充填して固めた。かなり重い。シャーシは以前解体したアンプのシャーシ(SRDSL-20)の天板だけアルミ板を買ってきて加工した。完成した姿。写真に撮るとちゃんとグローが見えるな。

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出力は THD=5% で10.5W。ほぼ見込み通り。300Bシングルとして考えれば大出力な方だろう。ゲインが 4dB の NFB をかけた上で 24dB ほど。もうちょっと欲しかったかも。この NFB のお陰でダンピングファクタはほぼ5になる。NFB 抵抗に抱かせた 820pF のマイカコンデンサの働きで周波数特性には大きな山もなく、10Hz から 70kHz までほぼフラット。特に低域に関しては、10Hz でも 1W 時の歪率が 1.4% という数字で、これは予想以上に OPT が優秀だった。ただ、悪い方に予想外に残留ノイズが大きい。無音時だとはっきり聞こえるレベル。気にしないという方法もあるが、100Hz 成分でフィラメントハムではないから、電源のコンデンサを大きくして対処しよう。整流管の GZ37 はインプットコンデンサの制限が厳しいが、保護抵抗をかませてこのコンデンサを大きなものにするだけでかなり改善することが予想される。こことチョークの後のケミコンをなんとか数倍の大きさにすれば気にならないところまで減らせるのではないか。

音質はというと、上述のノイズのことを除けば完璧。がっちりした低音とスイートな中高域で、ジャンルを問わず楽しく聴ける。早いとこ部品を手当してノイズ対策をしよう。