Taylor T-20 シングル

久々の新作は Taylor T-20 シングル。

Taylor はかつて存在した送信管専門メーカーで(今でもブランド自体はどこかが持ってるようだ)シカゴにあった関係から、WE と共通の部材が使われていたとかいう話もある。で、805 とか 211 といった一般的な球の他に、独自規格の球がいくつかあって、型番の頭にTがついてるのはそういう独自の球だといえる。今回使ったT-20もその一つで、型番通りプレート損失とμがどちらも20という、トリタンフィラメントの直熱三極管である。規模としては VT-62/801A に近いが特性は全く違い、どちらかと言うと 841 に似ている。また同規模で TZ-20 というゼロバイアス管もある。フィラメントは 7.5V/1.75A なのでVT-62 より五割近く電流が多い。

作例もまったく見つからず、とりあえず実験アンプで動かしてみたところ、音にも性能にも見るべきものがあるので、ちゃんとしたアンプに仕立てようと思った次第。中古の球数自体は少なくないが、主にアマチュア無線のファイナルで使い倒されたものが多く、程度のいいものは多くない。大抵は陶器のベースにニッケルプレートの素朴な球だが、たまにマイカベースでブラックプレートのものがあり、今回もそういう個体を使用した。

なにしろグリッドがプラスマイナス両側に振られるので、手っ取り早く動かすにはカソードチョークドライブが手軽である。そこでドライバに gm の高い 6BQ5 を採用し、カソードに 30H のチョークと巻線ボリュームを入れてT-20 に適切な電流が流れるようにする。マニュアルにはタフな球で 32W 突っ込むとプレートに赤斑が出るとか書いてあるが、電流を流しっぱなしのA級で使うので定格の 20W を守る。Ep=400V、IP=50mA くらいが目安。また初段にはゲインが欲しいので WE404A を採用する。

電源トランスは10年位前に中古で買ったタンゴの MX-165 というもので、50シングルや VT-62PP を想定したもののようだが、B電圧がこちらの欲しいものより少し高いので、抵抗を入れたりインプットコンデンサを小さくしたりして取れる電圧を低めにしてみる。OPT はタムラのF-915である。これもモデルチェンジ前に買ったので現行品よりはだいぶ安く買えた。タムラの中では普及品の位置づけだが、俺にとっては十分に高級トランスである。

そしてできた回路がこちら。

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この回路で、THD=5% で約 8W 出る。10dB ほどの NFB をかけてゲインが25dBほど。だいたい 30Hz から 70kHz まではほぼフラット。音としては、オーディオ用三極管のしっかりした中低域に送信管らしい華やかさがちょっと乗ったような、なかなか独特の音で悪くない。もう少しこなれてくるとどうなるか、しばらく色々聴いてみよう。

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