6528 SRPP

以前作った 6528 の SIPP(Self Inverting Push Pull)アンプ。特に悪いわけではないがいまいち常用するには決定打がなく放置気味であった。そこで思いついたのが SRPP 化すること。なにしろこのアンプで使っている Amplimo の OPT は一次側が独立した二つの巻線を持っており、それをパラにすれば約 900Ω:8オームのマッチングトランスになる。そのうえでインダクタンスが極めて大きく40Wまで許容する。さらに 6528 という球もさすがレギュレータ管だけに H-K 耐圧が 300V もある。内部抵抗が低い割にμが高くバイアスも浅いから、SRPP にした際に無駄になるバイアス電圧が少ないので電源電圧を効率的に使える。その上初段も SRPP だから、全段 SRPP というアンプになる。これは SRPP にしろと言ってるようなものではないか。

ざっと計算してみると、電源トランスの 320V をダイオード整流して、目減り分を差っ引くと使える電圧は 400V くらい。そこでまず Ep=180V、Ip=100mA あたりを目安にロードラインを引いてみる。動作点での球の内部抵抗が 400Ωくらいで、そうすると負荷抵抗はだいたい 1.7kΩくらいになる。SRPP の常で、上下のカソード抵抗の値を同じにしているとバイアスが浅すぎて効率が悪いので、下の球のカソード抵抗を少し大きくしてみる。出力インピーダンスが 200Ωほどなので、900Ωというマッチングトランスは最適とは言えないがまあ仕方がない。

そういう設計で早速部品を購入してきて改造してみたが、思ったより電圧が上がらない。想定していたより 20V くらい低くなってしまった。その上で実測した電圧を書き入れた回路図がこちら。

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トランスの結線を間違えたりしてちょっと手間取ったが、無事完成。見た目は以前と全く変わらないので写真は省略。早速測定してみると、まず出力は THD=5% でほぼ 6W。もうちょっと取れる予定でいたが、電圧が低めなのでこんなものか。周波数特性は、20kHz くらいに 1dB ほどの瘤がある以外は(これは OPT のデータシートを見る限り OPT の癖の範疇のようだ)10Hz から 70kHz あたりまでほとんどフラット。素晴らしい。NFBが 6dB で仕上がり利得が 26dB と理想的。ダンピングファクタも出力インピーダンスが低いだけに10もある。残留ノイズは計測上は 0.3mV ほどだが、実際につないでみるとまるで無音で不安になるくらい。

音はというと、今まで作ったアンプと全く違うのでちょっと戸惑っている。ひたすらクリアで癖がなく、かといって広がりや厚みがないわけでもない。もうちょっと色々聴いてみて傾向を把握することにする。