プリアンプ

ずっと使っていた EF37A プリアンプの調子がちょっと悪くて、調整するために外していたのだが、試しに DAC からボリュームのみを通してパワーアンプに直結して鳴らしてみた。プリアンプがあるのとないのとでどっちがいいかといえば、総合的にはあった方がいいのだけど、若干音が滲むというか輪郭が甘くなるというかそういう感じもある。考えてみればこのプリアンプも作ってから結構経っていて、今だったらこういう風にはしないよなあ、と思えるところがある。ので、いっちょプリアンプを完全に作り替えることにした。

高価なトランスはそのまま生かすとして、考えたのは双三極管によるトランス出力の単段差動という、ありそうであんまり見かけない単純な回路だ。6528PP を作ったときに、差動というのは音はいいんだけどなんだかつまらない、素直すぎる音だという印象を持ったのだが、逆にその性格はプリアンプだと都合がいいのではないかという発想である。パワーアンプやスピーカーのアクが強いのでプリアンプは正直にインピーダンス変換と若干のゲインの獲得ができればよい。

んで最終的な回路はこんな感じ。

f:id:mandana:20100227165036j:image:w640

球に 7AF7 を選んだのは、以前使って印象が良かったのと、バイアスがやや深い球にすることで定電流源を駆動できる電圧をマイナス電源なしに確保できることによる。整流管はロクタルで揃えると事実上 7Y4 くらいしか選択肢がない。計算上の利得は6dBくらいになるはずである。チャンネルあたり9mAくらいを流す計算。プッシュプルなのでヒーターの直流点火も簡素なもので構わない。

たったこれだけの単純なものだが、案外苦労した。というのも当初定電流源に LM317 を使ったらこれが盛大なノイズを出す。CRD に置き換えてもあまり減らない。そこでローノイズ FET である 2SK30ATM のソースとゲートをショートさせて CRD として使うことでようやく落ち着いた。二つを貼りあわせて熱結合も狙ったが効果があるかどうかは分からない。

完成形はこうなった。

f:id:mandana:20100227164134j:image:w640

ALTEC のユニットみたいなグリーンのハンマートーン塗装をしてみたがただの緑にしか見えない(笑)。音はほぼ狙い通りで、癖はないが音の幅や奥行き、芯が加わる感じ。もうちょっと調整の余地はありそうだが、まずまずいい感じで仕上がった。