808 シングル改修

改めて自分の好みに合ってるのだなあと思えた 808 シングルだが、より最適な動作を目指して、ダイナミックカップルから、ドライバのカソードにチョークを用いたカソードフォロワに変更してみた。回路はこうなった。

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回路図には右チャンネルの数字が入っているが、出力管の Ig がかなり左右で違うので、左右で Ip はほぼ同じなのに Ig の多い側のドライバにはもう一方の倍近い電流が流れることになり(結果としてドライバの Ep が下がり)あまり具合が良くない。ダイナミックカップルより、ドライバのカソードに抵抗成分が入っただけこの回路の方がこの問題が顕在化したようだ。最終的なゲインや最大出力は殆ど変わらないのだが。それでも、この種の球で Ig まで揃った個体を探し出せるとすればそれはもう奇跡の領域であって、微調整でごまかしていくのが現実的なやり方だろう。

出力は従来の 11W 弱が 12W 強になっただけで誤差の範囲で、周波数帯域も特に変化はない。その意味では若干期待はずれだった。しかし音は結構良くなって、特に低音が明確になった。おかげでバスドラのキックやベースラインがはっきりしたので、音楽により説得力が増したように感じられる。

最初に作ってから1年半近くが経過していて、当初からはやや見た目も変わったので現状の写真を記録として掲載しておく。

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ちなみに OPT はハモンドで、このトランスは高域の特性があまり良くなくてガタガタなのでアメリカの自作派の中には「ハモンドwww プwww」みたいな態度を取る人もいるのだが、高域は補正である程度ごまかせるし、極端な話上を LPF ですっぱり切ってしまえば問題にならない(そういうのを嫌う人が多いのは知っているが、40を超えたおっさんの耳には可聴帯域がフラットにカバーされてれば十分なのである)。しかし低域はどうにもならないのであって、このトランスはインダクタンスが 48H とでかく、実際にこのアンプでも 808 のような高 rp の球にもかかわらず測定限界の 10Hz が余裕でフラットで出ているし、10Hz の歪率も 5% に届くのは 5W 位という優秀さなので、高価ではないトランスでこれだけの低域が得られるのは貴重である。聴く音楽の7割方がロックなので低音は重要だ。音色の点でも、いろんな OPT を今まで使ってきたが、PP 用も含めてハモンドの音は好きである。日本製高級トランスのような繊細さには欠けるかもしれないが、パワフルで生々しい感じがする。次に大型シングルを作るとしたら、またハモンドを選ぶだろう。最近のハモンドは高域も少しは改善されてるらしいし。