雑感

大体調整してこんなもんかというところに落ち着いた 45 シングルであるが、当初の構成よりは好きな音になった。どうもこの手のオーディオ三極管はμが低く、したがって前段に大きなゲインを必要とするわけで、それを高 gm の五極管で賄ってももうちょっと欲しいというところがある。今回のも裸利得が 27dB、3dB のごく僅かな負帰還を施して結果 24dB である。オレのいつもの目標である 26dB と大して変わらんじゃないかという数字なのだが、聴感上はもうちょっと勢いが欲しいところだ。

だからといって中μ三極管の三段構成にするとこれが何だかもっとつまらない音になる。前の構成はさらに低 rp 管の SRPP をドライバに持って来ていて、理屈では有利なはずなのに、音はなんだか凡庸で我ながらどうだろうという感じだった。なんつうか、この 45 はじめ 2A3 とか 300B とか(300B はオリジナルは使ったことないけど)所謂銘球は、内部抵抗が低くて直線性がよくて低歪みで扱いやすいのは確かだが、なんだか「いい音」がしてしまうのが気に食わない。たぶん世間的にはこれがオーディオアンプとして正しい方向なんだろうけど、オレとしてはもうちょっと引っかかるものが欲しい。

オレの僅かな経験では、多極管をそのまま使う場合や、三極管でも内部抵抗の高い送信管はそれぞれにアクが強くて、その癖を自分に合うようにいじり回すのが性に合ってるようだ。じゃあなんで 45 のアンプなんか作ったんだという話だが、ネタっぽいものを作ってるとまともなものをやってみたくなるんだよね。で、やっぱり面白くないという結論に達する。まあ、こういうのが一つくらいあってもいいとは思うけど。

普通にいい音がするアンプなら既製品でもあるし、センセイたちが色々発表している回路を真似すれば間違いがない。無駄な手間でわざわざ苦労するところにアイデンティティを見出してるあたり、我ながらいい年して中二病臭い。今後の目標としてぼんやり考えてるのも、EL3N とか KT8 とか EL38 とか T20 など、あんまり相手にされないものばっかり。突然飽きない限り何年かはこういう妙な球で遊べそうだ。願わくは世界の経済が破綻して原油や金属の価格が暴落せんことを。