今日届いたCD

30minutes night flight (DVD付)

30minutes night flight (DVD付)

オレだって辛気臭い現代音楽や辛気臭いユーロプログレばっかり聴いてるわけではない。「女性ヴォーカル」というカテゴライズとは別に女性が歌を歌う音楽は聴く。ただそれがアニソンから EBTG あたりを経由してダグマー・クラウゼまでのレンジを持つというだけであり、オーディオマニアの言う「女性ヴォーカル」は「主に白人女が甘ったるい声で歌うスカスカのジャズ風味産業音楽」と言い換えるがよかろう。

で、タイナカサチであるが、所々に美点は伺えるものの平凡。力はあるがやや一本調子で抑揚に足らないところが感じられる。普通のポップスとして捉えるにはややあざといというかある顧客層を狙っているところが見えるし、かといってそういう顧客層へのアピールは足りないという、立ち位置の微妙さが敗因だな。そのあたりはたとえば Suara の方が潔い。もう少し作り込まれていれば評価も別だが、ストリングスアレンジも含めて安手。もうちょっとがんばりましょう。

一方坂本真綾の方は、さすがに菅野時代の才気は感じられないが、思ったよりはよかった。菅野の下を離れた直後に出たシングルなどはどうしようかというできだっただけに一安心。ただ現状では菅野時代に作られた坂本真綾を演じている感があり、その影響力の強さは大変なものだなあと同情もしたくなる。アルバムのできとしてはよくまとまっているし、上述のタイナカサチと比べると金と手間がふんだんにかかってるのがありあり。音の厚みや空気がまるで違う。アレンジにしても地味なところで手が込んでいる点が音楽的深度につながっている。たとえばポップスのストリングスアレンジはこれ見よがしにゴージャスにしちゃ駄目なんだよね。あと、オレがとてもいい曲だと思った「セツナ」がどうも世間では評判が悪いらしいあたり、坂本真綾のファンってのがどういう層なのかは分かりやすいが、むしろこういうストレートな曲を増やすことがブレークスルーにつながるんじゃないかと思うけど。かつてオレは坂本真綾の音楽を「俺様世界のBGM」と批判的に評したことがあるが、このアルバムではまだ外側へ視線が向かうまではもう少し、という感じ。

まあ、アニソン歌手や声優の作品でなければこんなアルバムたちは買わないだろうし、所詮その程度ではある。こういうものを聴いてる時間にペルトやライヒを聴くべきだと自分でも思うよ。