適正音量

夜中の三時にクレンペラーの『復活』(1962年、フィルハーモニア)をがんがん聴いてて思ったんだが、スピーカーをローサーにしてから明らかに音楽を聴く際の音量が上がった。ハイゲインなアンプに高能率のスピーカーというのは(オーディオ的な意味とは少し違うが)情報量は増えるけどノイズも増える両刃の剣で、この盤でいえばマスターテープのヒスノイズが聞こえちゃう。にもかかわらずそんなの気にしないで音量を上げたくなるのである。

nOrh はあまり能率も高くない上に優しい音で、ふわっと広がる感じを得意にしていたのだが、ローサーは長岡流にいえばハード&ダイナミックである。弐號機 300B シングルもそんな感じだ。nOrh はいい意味で聴き疲れしないから、あまり音量を上げずにゆったり浸る感じで聴けたけれど、ローサーは悪くいえばうるさいし疲れる音だから、音量を上げて一音も聴き逃すまいという姿勢で臨む方が気分としては合っている。音量という形で顕現するにしても、要するに音楽を聴く姿勢が変わったということなのだろうな。

しかしまあ、ちょっと直接的な手触りのようなものを追究しすぎてチューニングした感もあって、たとえばチェロソナタなどを聴いてると「ゾリッ」とくる感じがなかなか快感である一方で、オーケストラは正直ちょっとうるさい。破綻してる気もする。音量を下げるとその破綻も気にならなくなるわけであり、自分にとっての適正音量が変わるとオーディオに求めるものが変わる。でかい音で破綻しないのは難しいよなあ。