安い球

安い球が好きだ。RCA の 845 だの刻印 300B だの PX25 なんてのはオレにはまったく関係がない。

安く売られてる球はダメだから安いのではなく、ヒーターの規格が特殊だとか、単にあんまり普及しなくて知られてないからとか、そういうものも多い。VT-25A なんかは高い球だけど、傍熱化してヒーターを 2.5V/2.5A にした 843 なんてのなら安く買える。WE のロゴが欲しければ、403A/ 6AK5 なんかも安いぞ。これなんか普通に使いやすい五極管で、Mullard の EF86 あたりをバカみたいな値段で買うならこれを使うがよい。ただの 5670 に過ぎない 396A が凄まじい値段になってるのと対照的。オレが 300B アンプのドライバに使った EL32 も、Mullard の Blackburn 工場製のが、探せば1,000円くらいで見つかる。

もう一つは旧ソヴィエトの球で、目敏い商人が蘊蓄をくっつけて凄い値段で売ってる商売も散見されるが、大概はものの割にとても安い。SOVTEK ブランドで 5881 として売られてる球の原形になっている 6N3C-E なんてのは1,000円くらいで買えるけどとても音がいい球だ。スクリーンが弱いので要注意だが。えらく値上がりした E288CC あたりの代わりに 6N6P を使うと予算は一気に五分の一くらいになる。これもとてもいい球だ。写真は零號機で現用中の 6N3C-E。

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安くても中国球は品質がぐっと落ちるのでやめた方が無難だけど。五〇~七〇年代のソヴィエトと中国の文化程度や工業力の差を考えれば当然だが。同じ理由で東欧の国々の球もいいものが多いようだが、残念ながらこちらは希少価値がつき始めて値上がりしてしまっている。

いちばんばかばかしいのは国産球で、特に高度成長期以前の真空管なんて何の実質的価値もない。工業製品なんだから、高度に管理された大規模工場で大量生産されたものがいいに決まっている。また 50CA10 に代表される、単に有名な割に数の少ない球。特に東芝系は無駄に高い気がする。松下と品質は変わらないと思うんだが、MT 管だと倍くらい値段が違うことが多いんだよね。

ま、貧乏性の貧乏人としては、安いのにいいってのはこの上ないエクスキューズになるわけで、金持ちに対する僻みを間違った優越感に転換して精神の安寧を得るわけである。