今日の一枚

Hosianna Mantra

某所で話題になって久々に聴きたくなった。十代のころからヘルツォークは好きで、したがって昔からポポル・ヴーには割合馴染はあった。しかしながら例によってカセットでしか音源を持っていなかったので改めてこれを買い直したわけである。

このアルバム自体はサントラではなく、この路線になってから最初のアルバムなんだろうか。音楽としての形態はまったく違うが、この浮遊感はアシュ・ラ・テンペルと通じるものが感じられなくもない。マニュエル・ゲッチングが90年代半ばくらいから急に再評価されるようになったのに対し、フローリアン・フリッケはとっくに亡くなってしまっているので今の扱いはかなり地味なのかな。

60年代からのスピリチュアルなものへのヨーロッパの音楽家の傾倒が一段落して、それを一旦相対化した視点から作られた音楽であるように聞こえる。「マントラ」という言葉がアルバムタイトルに使われているが、エキゾティックなフレーズが使われているわけではなく、たとえばグレツキにも近いといえる、たゆたうように反復され徐々に aufheben されていくスタイルは唯一無二。ま、このあたりの音楽についてはオレなんかが四の五の言う資格はあまりない。

ちなみに30年以上前のアルバムであることを踏まえると異常に録音はいい。ドイツの音楽は、クラフトワークやタンジェリンの例を俟つまでもなく、DAFノイバウテンに至るまで、優れた録音が多いように思う(CAN なんかは別か)。イタリアンプログレが大概ダメなのと比べると対照的。やっぱりテレフンケンやノイマンの国だわなあ。