45 シングル改造

この間作った 45 シングルアンプだが、大暴れする特性をなんとか補正で誤魔化したものであってあまり気分が良くないし、そうやって押さえつけた所為か音もなんだか気にくわない。さらに、換装した OPT も元の穴が残ってしまっていて格好が悪い。そういう気に入らない要素が多く残ったアンプをそのままにしておく必要も自作である以上存在しない。

そこで、まず OPT を元来の James に戻すところから考える。結局問題は回路の側で帯域を伸ばそうとしたところ、OPT の能力を大きく超えてしまい、その領域で大暴れをしたということだろう。だったら最初から上の出ないアンプであれば OPT の限界は露呈しない。またこの James の方がインダクタンスも大きくて低音が出る。つうことで、45 のミラー効果を敢えて利用して帯域を制限したアンプとしようという大体の形ができる。

その上で充分なゲインをとろうとすれば初段はそこそこ gm の高い五極管になる。今回使用したのは WE404A で、大体動作点を考えると gm が 3.5 くらいになる。これなら 100k くらいの負荷でたっぷりゲインが取れる。45 は直熱三極管といってもキャパシタンスは 2A3 や 300B と比べるとあまり大きくなく、机上の計算では 70k くらいの LPF を入れたのと同じようなことになる。であれば可聴帯域をフラットでカバーすることはできよう。巷の 91B タイプと称する二段構成アンプだと 20kHz で -3dB なんていう人をバカにしたようなアンプが多いが、そういうことにはならないだろう。そのような二段構成にすると元々の初段の穴が余るので、賑やかしにスタビロを差して初段の sg の安定化を図ることにする。

で、できたのがこれ。

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前段両端の 0B2WA があんまり光らないのでつまらない。帯域は約 5dB の負帰還をかけた状態(それでもゲインが 26dB くらい確保できている)で 1W で 30Hz から 35kHz がほぼフラットと、予想よりずっといい。無帰還でも 20kHz までは届いている。高域の暴れもゼロではないが、目論見通り充分減衰した後の話なのでとりあえず放置。ただ出力が小さくなって、THD=5% で 1.6W 程度しか出ない。初段が 45 を振り切れてないのか、少し電流が足りないか。

それでも、なにしろ出てきた音が当初よりずっと良いので改造としては成功だろう。ノリがいいというか、思わず音量を上げたくなるような音だ。こういうグルーブ感みたいなのは回路図でも測定値でもわからない。経験的には初段は五極管に限る。中μの三極管の三段構成なんかだとどうもうまくいかない。

要するに、オレ程度の知識と経験で理屈でアンプを作ろうとしても駄目だということだ。回路のインピーダンスを低くして広帯域で、というのは理屈であって、実際にそれで出てくる音がいい保証はない。むしろどっかが足を引っ張って却って破綻する確率が上ってしまう。単純に越したことはない。それでも何かテクニックを覚えると使ってみたくなって徒にギミックの多い回路を考えてしまうものだけどね。