電気のこと

原稿の締め切りが明日の朝で、こりゃ徹夜だわいと思いつつ現実逃避。何となく思ったことを。

オレは純粋文系で、大学も文学部だし、電気についての知識は全くない。カリキュラムの所為なのか何なのか、中学で最低限の知識を習った記憶もなくて、オームの法則だってろくに知らなかったくらいだ。共通一次世代なので「理科I」とかいうわけの分からない科目でほんの僅かに物理っぽい分野の勉強を強いられたはずなのだが、そこに電気が出てきた記憶が全くない。だから今でもほんのちょっとでも込み入ったことになると皆目見当もつかない。

ただギター小僧だったこともあって、音が出る機械には何となく関心もあり、見様見真似で半田ゴテを握った経験はある。逆に言えば、真空管アンプに手を出すまで、電気関係の経験はそれだけだった。なのに何で今こんなことをやってるのか自分ではよく分からない。

だからといってはなんだが、オレごときでも数百ボルトの電気に触って死なずに済んでいるのに、「電気はわからない」と開き直って済ませているオーディオマニアのメンタリティって何なのだろうと思わないでもない。特に真空管回路の基礎的なところなんて単純なものだから、ごく基本的な理屈だけわかれば取りあえず動くものはでっち上げられる。例えばキットなんて、ちゃんとプロが間違いのないように設計してその回路図も付いてくるのだから、電気の流れを理屈にしたがって追っていけば、大まかな仕組みは理解できるはずだ。その程度のことでも分かると、楽しめる範囲はぐっと広がると思うんだけど。

できる範囲で手を動かして、頭を使って、それでようやく分かることは多い。少しずつその範囲を広げていければそれに越したことはない。問題に出会ったとき、何とか自力で解決に到達したときは楽しい。そういう素朴な楽しみがどっかに行ってしまったのが、今のオーディオ趣味なんじゃないかと思うこともある。真空管に限らないけど、自分で何かを作ってみることって、趣味の健全さを保つ一つの方法ではあるだろう。もっとややこしい回路を自分で考えられたり、トランスを自分で巻いたりできればもっと楽しいだろう。木工や金工が上手になって、好きな形を実現できたらそれもとても楽しいだろう。そう思わない人がいるということが今の僕には理解できないアンインストール。