ペッタション

某所で「顔が似ている」という理由で (笑) 薦められたのだが、一番有名らしい交響曲9番のディスクを買ってみた。ペッテション:交響曲 第9番

70分近い大曲なのに一楽章。陰鬱なフレーズが延々繰り出され、最後突如長調の長音で終わる。オーケストレーション自体は1970年という作曲年代を考えるとオーソドックスで、ペッタション自身が現代音楽やエレクトロニクスに強烈な不信感を抱いていたらしいこともあってか、断片として捉えるならば斬新な音楽ではない。が、全体を通して聴くと、真ん中あたりでやや展開らしいものがある以外、ずっと「辛いぞ、悲しいぞ、苦しいぞ」というフレーズが続くのは強烈だ。演奏する方に要求される集中力もただ者じゃないだろうな。

貧しい家庭に生まれ、アル中の父親の暴力に晒され、母親は味方になってくれず、12歳でようやく葉書売りの仕事で得た金でヴァイオリンを買ったという生い立ち。矯正学校 (少年院みたいなものか、あるいは救貧施設みたいなもの?) にぶち込まれる恐怖と戦いながら音楽を学び、長じてオーケストラのヴィオラ奏者になるものの病気で演奏家としての生命を絶たれ、作曲家としても自分が評価されていないという意識に苦しめられ、苛烈な人柄のせいで敵を作りまくり、孤独のうちにガンで生涯を閉じたという話だけでお腹いっぱい。その音楽は自身の叫びだと作曲家本人が公言している通り只管暗くて重い。他の曲も聴いてみよう。これ聴いて「音楽は癒しだ」とか言える奴などいるはずもない。いたら謝る。すまん。

ついでに言うと、このディスクは音質は良好。演奏も、他のバージョンを聴いたことがないのでなんとも言えないけどオレはこういう音は好きだ。