耐久整流管聴き比べ大会

気がつくと随分と整流管が溜まってしまった。オレの育った村では「親が死んでも整流管」という言い伝えがあり、半導体整流のアンプを作るとオヤシロサマに祟られると信じられている。なので、たとえば大規模なアンプを作る際には、モノにするとかパラレルで使うなどしてでも整流管による電源にしなければならない。嘘だ!

それはともかく、GZ37 を 5R4WGY にしたら大きく音が変わったように、整流管は案外出音に影響するのである。そこで弐號機に使える整流管を集めて、差替えて聴き比べてみようという企画を思いついた。もちろん一番結果が良かったものが採用されるわけだが。エントリーされるのは、デフォルトの Mullard GZ37/ CV378、Chatham 5R4WGY、Ultron 5R4GY、RCA 5U4G、松下 5AR4 で、それと定格ぎりぎりなので常用するのは怖いが一応 RCA 5V4G も参考出品。5Y3 とか 5W4 はそもそも定格オーバー。弐號機はトランスからのB電源供給が AC400V で、全体として 170mA くらい流れる計算である。

既に実装して計測したことがあるものもあるが、そうでないものは改めて電圧と電流を測らなければならないし、完全にアンプが冷めるまでは球の差替えもできないというわけでかなり面倒な作業になってしまった。整流効率としては 5AR4≧5V4G>GZ37≧5U4G>5R4GY=5R4WGY という感じだが、定格に余裕のある 5AR4 で 300B の Ep が 20V、Ip が 1.5mA くらい増えるものの、その他はあまり変わらない。さて音であるが、GZ37 を基準として他のものをそれぞれ比較することにする。完全に主観なのであまり真に受けないように。

  • 5R4WGB:前にも書いたが、GZ37 と比べると明らかに重心が下がる。その分高音の情報量も少し減る。ただ聴きやすくなるのは確か。
  • 5R4GY:5R4WGY と定格上は同じようなものだが、音は結構違って、5R4WGY よりもスムーズである。逆に言えば5R4WGB はやや粗くノイジーでもある。
  • 5U4G:上記二種よりもワイドレンジで透明感がある。下もきっちり出ていてバランスもよい。
  • 5AR4:5U4G と比べるとやや硬いというかちょっとささくれが感じられる。悪くないけど。他に使い道がありそうだ。
  • 5V4G:しまった、これが一番いいかもしれない。バランスがいいだけでなく、全体に微妙に艶が乗る。人の声などは相当魅力的。

ということで、単に音でいうと 5V4G が一番いいのだが、いかんせん定格上の不安が残る。これは別のアンプで実力を発揮してもらうことにして、次によかった 5U4G をここでは採用することとしよう。元々使っていた GZ37 は他のものに比べるとハイ上がりで低音が薄くなってしまう。むしろ低音過多のシステムで使うとバランスも取れて、高音の透明感や情報量が生きてくるだろう。WE の整流管も使ってみたいのだが、なにしろとんでもないお値段だしなあ。