お宅訪問

一夜明けて大橋さんのご自宅のリスニングルームに伺わせていただく(念のため、ご自宅なのでもちろん頼めばだれでも上げてもらえるわけではない。いきなり押しかけたりしないように)。

入ってまず目を引くのはお馴染の JBL の巨大なシステムと WE のホーン。WE のホーンは実物を見るのは初めてだが、なんというか謎の物体って感じである。JBL のシステムはその巨大ななりの割に端正で穏やかな音。リボンツイータなのも効いているのだろうが、こういう巨大なシステムにありがちな鬼面人を驚かすというタイプとは正反対。普通にいい音のスケールだけが拡大したというところか。地を這うような低音、おおらかな響きはもちろんスケールメリットとしてあるのだけど、それら要素がちゃんと一つのまとまりを形成していて、なんら違和感がない。スピーカーがでかいのではなく、こちらが小さくなったというか。こういう風にばかでかいスピーカーを、しかもダブルウーファーにホーンの組み合わせで鳴らせる人はまず他にいないと思う。このあたりは元々ハイエンダーである大橋さんの経験的バランス感覚の成果なのだろう。ただ、甘くならずに峻厳なところはちゃんとあるので、こういう音を出している人がああしてアンプを作っているのだということがよく分かった。

WE のホーンは、トーキーのごく初期のものだけれど、さすがに声がいい。変な喩えだが、いいギターアンプみたいな音。オレの経験値が足りないので、たとえば励磁型ならではのメリットとかそういうことは分からないのだけど、ああいうもので SP を聴くという趣味が成り立つ所以はなんとなく把握した。ま、あの形といいタンガーバルブの輝きといい、モノとして欲しくなるのはとてもよく分かる (笑)。

それと所謂ランドセル。ユニットは ALTEC の 409 のどれかだそうだが、これはとてもよかった。WE のモニタルーム用のアンプ(型番を忘れた)で鳴らされていたが、こいつはなるほど欲しくなる。形がいいのはもちろんだが、うまくいえないけどどっかを鷲掴みにする力がある。しきりに「いいなあ」と言ってたら「メインを褒めてよ」って言われちゃったけど。

というわけで、単にメーカーのショールームを訪問しました、という話ではなくて、先輩マニアの音を堪能させていただいたという経験といえる。足掛け二日長時間にわたってお付き合いいただいて全くもって感謝感謝である。オレは客としてはろくに買ってない泡沫客だが、それでも時間と労力という貴重きわまりないリソースを割いてもらっちゃってなんだか申し訳ないくらいである。