いいものと変なもの

なんというか、300B シングルの方が普通にいい音がしそうなのはわかってるんだけど。今まで聞いたことのある 6C33C を使ったアンプは、透明感はさすがに三極管という感じだけど、主に低音に独特の迫力がある点で共通していた。別の言い方をすれば低域にピークの出やすい球なのだと思う。シングルでも PP でも、OTL でもトランス付きでも一定の傾向があって、個性の強い球なんだろうね。

オレが 805 とか 845 とかのでかい球に対するこだわりが捨てられないのも、とんでもないプレート電圧に代表される過剰と、これらの球にある独特の迫力が好きだからだ。6C33C もプレート電圧は低いけれど無闇に電流を喰うし、プレート損失がまたやけに大きくて、形と定格に現れている過剰が気になってしょうがない。300B のように定評のあり過ぎる、バランスのとれた球と違うバロック的いびつさというか。もちろんそれぞれの球には用途に合った合理性が存在するので、それらが無駄に過剰であるわけではもちろんないのだけれど、オレみたいな文系バカはそこに何かを見出してしまう性分を本性として有している。バランスのとれた美しいものと変なものが並んでると変なものを選んでしまうというか。845 くらいならオーディオ用途で昔から定評があるし RCA のシアターアンプだって存在するからそんなに変ではないが、805 は純然たる送信管で、わざわざあれを買ったのは「変だから」という理由は否定できない。トッププレートがまた変だし。で、6C33C もかなり変だ。あれをオーディオ用として見出したのはジャン平賀だという話だが、なんにしたって元々オーディオ用途の増幅なんてかけらも考えられてないはずで、それがまた変でいい。

と、ここまで書いてみると明らかなように、6C33C アンプを所有してみようかという方にかなり傾いている。もう何日か現状を色々勘案してみるが。