ブログの移行

 というわけではてなダイアリーが終わるそうなので作るだけ作って放置していたこのはてなブログを改めて活用することにした。万が一何らかのブックマークサービスなどに旧ブログを登録されていたらこちらに変更をお願いします。

 最近オーディオいじりモードに急速に入っているのでネタもゴニョゴニョとあるのだが、いろいろ整理がついてから一つずつ記事にしていこう。

復活のTQWT

 バックロードホーンの小さなキットを作ってみて興味が出たはいいが自分でやるのはムリだなあ、と思っていたところ、そういえばバックロードホーンじゃないけどTQWTのしっかりした箱を持ってたじゃん!ということを思い出した。要はバスレフや密閉以外の、開放的な音に関心が改めて出たわけだ。

 以前Lowther PM-6A を買って、そのために箱を作ってもらったのだが、結局うまく鳴らず、金に困っていたこともあってユニットは売っぱらってしまった。しかし箱は売るにも面倒で物置に放置していたので、それを引っ張り出してきたのである。

 TQWT は言うまでもなく共鳴管だから、ユニットの低域の限界にあまり左右されない。したがって、バックロードホーン専用のようなオーバーダンピングでローコンプライアンスなユニットでもちゃんと低域が再生できるのがミソなのだが、案外設計が難しいようで実例はそれほど多くない。俺も自分では作れなくて、ほぼ趣味で作って売っていたプロの方にお願いしたのだった。

 改めて引っ張り出してくると、さすがにプロの作品で重くてしっかりしている。ただバッフルもLowther専用なのでユニット穴はともかくネジ穴は他のユニットに合わない。まさか Lowther なんか買えず、Fostex の20cm バックロードホーン用ユニットで最も安価な FE206En を使うことにしたので、かなり無理矢理ネジ止めしたがなんとか破綻せずに固定できた。

 まず FE206En のみで鳴らしてみると、悪くないどころか思った以上にいい音だ。低域はもりもり出る上にノートがはっきりしていて沈むべきところが沈む。これが TQWT の能力かと思うと、以前の環境では箱の性能を出せていなかったのだな。製作者の方に申し訳ない。

 中高域もなかなか分厚くて昔よく言われた紙臭いだの高音が刺さるだのということもない。この値段のユニットでこの音が出せる Fostex はさすが大企業である。が、新品ということもありやや高域がシャリシャリするし音が全体的に硬い。なので Pioneer PT-R5Z を 0.47uF で切ってつないでみるとだいぶ広がりが出て音が明瞭になった。このままエージングして様子を見るか、とも思ったのだが、いたずら心というか実験精神で、帯域は FE206En とかぶるのを敢えて JBL 2402 を1.5uF で切ってかつアッテネータで大きく絞って足してみると、なんとも音に弾力や生き生きした感じが出るではないの。2402 すげえ、というか、測定したわけでもないので推測に過ぎないが、フルレンジで無理やり出している領域を良質のツイータでサポートすることでいい感じになったのではなかろうか。

 特にオーケストラなどは D123 より明らかに勝るが、ギターのリアルさなどは JBL に軍配が上がる。どちらにもいいところがあるのでしばらく FE206En をエージングがてら集中的に鳴らして改めて比較してみようというところであるが、こうなるとものすごい音がするという FE208-sol などにも興味が出てくる。もちろんあんなもん高くて買えないが、20cm フルレンジの可能性を改めて見直した。なにか高能率でオーバーダンピングな面白そうなユニットないかなあ。

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 こうやってスピーカーが並んでるとやばいオーディオマニアの部屋みたいでいいよね!

バックロードホーンのキットを作ってみる

 アンプを作り始めているのだが、それと同時にあふれる工作欲を満たすためにスピーカーが作りたくなった。しかし俺の設計能力とスペースなどを考えると、小型フルレンジのバスレフくらいしか作れないので、同じようなスピーカーがまた増えてしまう。

 そこで思いついたのがバックロードホーンであるが、これまた自力でなんとかするにはハードルが高すぎる。そこで安価なキットを作ってみて、バックロードホーンとはどのようなものであるかを後学のために理解してみようと考えた。ついでに余っているユニットも活用できる。

 購入したキットは、安価なバックロードホーンの定番であるBearhorn BW-800 である。ユニットはこれまた定番の SA-F80AMG が手元に余っている。このユニットはほんとに鳴らすのが難しくてあれこれ試した挙げ句放置していたものである。

 キットは9mmのMDFによる簡素なものだが、こんな小さなものでも結構板数は多く、作るのも案外大変だった。ちなみにバッフル穴は Fostex 向けに 73mm なので、Tang Band 系の 8cm ユニットを装着するためには若干穴を広げる必要がある。もちろん薄い MDF なのでヤスリでゴリゴリやればすぐだが。

 マニュアルのとおりに板を接着して、バンドで縛って重しを載せて一晩放置してから塗装する。ダイソーのニスを二本使ったら、叩いたときの音が「ポコポコ」から「カンカン」になったのでそれでよしとする。吸音材は、マニュアル通りの空気室に加えて、ホーンの出口前の壁にもニードルフェルトを貼った。これは出口が直角のバックロードホーンはここで定在波が出やすいとどっかで聞きかじったからである。

 で、こういう感じで使っている。

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 音はこんな安いキットなのに期待していたよりもよくてちょっと驚いた。バスレフで適当に使うと低音は出すぎるわ高音はうるさいわというユニットだが、低音がはっきりしているので高音のうるささもあまり気にならない。まあ薄い板の小さなエンクロージャだから大音量にすれば破綻するかもしれないが、デスクトップには十分である。いい買い物だったし楽しい工作だった。そして大型のものを自分で設計して作るのは絶対に無理だということも分かった。スピーカー自作派の人は偉大だ。

スピーカーにネットを張る

D123 が猫害によってダメージを食らったので、被害の拡大を避けるためにネットを張ることにした。

といってもやることは大したことではなく、

裏蓋を開けて

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ユニットを外してネットをタッカーで固定してユニットを戻すだけである。

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ネットはビンテージラジオのグリルのレプリカだそうで、よく見ると二色の糸が織り込まれていてなかなかきれいだ。なんだかスピーカーもかっこよく見える気がする。音の変化はわからないのでよしとしよう。

犯人は知らん顔ですやすや。

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モチベーション

この間作った T-20 シングルが俺的にはとてもいいので、これ以上アンプを作るモチベーションが下がっている。

ただ、諸般の事情で部屋を大幅に片付けることができそうだから、部屋がマシになればまた音も変わってくるだろうし、そうなればまたやりたいことも出てくるだろう。

そんな感じ。

Taylor T-20 シングル

久々の新作は Taylor T-20 シングル。

Taylor はかつて存在した送信管専門メーカーで(今でもブランド自体はどこかが持ってるようだ)シカゴにあった関係から、WE と共通の部材が使われていたとかいう話もある。で、805 とか 211 といった一般的な球の他に、独自規格の球がいくつかあって、型番の頭にTがついてるのはそういう独自の球だといえる。今回使ったT-20もその一つで、型番通りプレート損失とμがどちらも20という、トリタンフィラメントの直熱三極管である。規模としては VT-62/801A に近いが特性は全く違い、どちらかと言うと 841 に似ている。また同規模で TZ-20 というゼロバイアス管もある。フィラメントは 7.5V/1.75A なのでVT-62 より五割近く電流が多い。

作例もまったく見つからず、とりあえず実験アンプで動かしてみたところ、音にも性能にも見るべきものがあるので、ちゃんとしたアンプに仕立てようと思った次第。中古の球数自体は少なくないが、主にアマチュア無線のファイナルで使い倒されたものが多く、程度のいいものは多くない。大抵は陶器のベースにニッケルプレートの素朴な球だが、たまにマイカベースでブラックプレートのものがあり、今回もそういう個体を使用した。

なにしろグリッドがプラスマイナス両側に振られるので、手っ取り早く動かすにはカソードチョークドライブが手軽である。そこでドライバに gm の高い 6BQ5 を採用し、カソードに 30H のチョークと巻線ボリュームを入れてT-20 に適切な電流が流れるようにする。マニュアルにはタフな球で 32W 突っ込むとプレートに赤斑が出るとか書いてあるが、電流を流しっぱなしのA級で使うので定格の 20W を守る。Ep=400V、IP=50mA くらいが目安。また初段にはゲインが欲しいので WE404A を採用する。

電源トランスは10年位前に中古で買ったタンゴの MX-165 というもので、50シングルや VT-62PP を想定したもののようだが、B電圧がこちらの欲しいものより少し高いので、抵抗を入れたりインプットコンデンサを小さくしたりして取れる電圧を低めにしてみる。OPT はタムラのF-915である。これもモデルチェンジ前に買ったので現行品よりはだいぶ安く買えた。タムラの中では普及品の位置づけだが、俺にとっては十分に高級トランスである。

そしてできた回路がこちら。

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この回路で、THD=5% で約 8W 出る。10dB ほどの NFB をかけてゲインが25dBほど。だいたい 30Hz から 70kHz まではほぼフラット。音としては、オーディオ用三極管のしっかりした中低域に送信管らしい華やかさがちょっと乗ったような、なかなか独特の音で悪くない。もう少しこなれてくるとどうなるか、しばらく色々聴いてみよう。

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815PP

ここのところ、既存のアンプの改造も含めて割と真面目なアンプ作りが続いていたので、久々にスクラッチで見た目優先のものを作ってみようと思い立った。そこで選んだ球が 815。ツインビームの送信管で、832A や 829B と同じカテゴリである。見た目の面白さからかそこそこ作例がある。

で、こいつをこれといった工夫もない普通のプッシュプルで動かそうとして設計した回路がこういう感じ。

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スクリーン電圧の制約があるので、ここをツェナーダイオードで固定した他、計測結果でピークが大きかったのと超高域がやや不安定だったので初段に積分補正を入れた。これをすると初段の大きすぎるゲインがある程度抑えられてちょうどいい塩梅になる。位相反転は出力管のバイアスが浅いのでPK分割で簡潔に済ませた。しかし 6AN8 が便利すぎて大抵の初段をこいつで済ませる傾向があるなあ。また、OPT はハモンドの 1635 という古い設計のもので、あまり大きな負帰還はかけたくない一方で、不平衡に強いという特徴がある。そこで出力段のバイアス調整機構は省略した。カソードが2ユニット共通で調整が難しいというのが大きいけど。

で、できたのがこちら。ギターアンプ用の大きなジェムをパイロットランプに使ったのがアクセント。

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で、今回はボンネットのあるシャーシを使って、ボンネットも見た目要素として活用する。

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本当はシャーシもサビ塗装にしようと思ったがうまくいかなかったのでシャーシはハンマートーン塗装にした。ボンネットには歯車や工具などの真鍮のパーツを配してスチームパンク風味にしてみた。

出力は 9W で頭打ちになる。多極管ネイティブらしくハードクリップである。もうちょっといくかと思ったんだけどなあ。12dB の負帰還をかけて仕上がりゲインが 26dB と想定したとおりになった。補正の結果 20Hz から 70kHz はほぼフラットで、上はそこからなだらかに落ちるようにできたが、20Hz 未満の超低域がこれまたやや不安定である。カップリングコンデンサを小さくするなどして低域を切ったほうがいいかもしれない。

音質的には、高音にちょっとアクセントが乗った、昔の球アンプってこういう音だったよねという懐かしい感じ。特にダイナコあたりを彷彿とさせるものがある。これも狙い通り。まだ調整の余地はあるが、なかなか可愛いのができたのではないかと思っている。